社会人は専門性が求められる
中国での本科留学は就職に有利か? もちろん就職に有利になる場合もあります。ですが同時に、就職に不利になる場合もあります。
まず、社会人が仕事を辞めて中国に本科留学したあとに就職する場合。4年間の本科を終えて就職するときは、それなりの年令になっています。その時に求められるのは、中国語力ではありません。
中国語人材として雇うのならば、日本語が堪能な中国人のほうが、はるかにコストは安いです。社会人が本科留学後に就職する場合、中国語だけを武器に就職活動を戦うのは圧倒的に不利です。
社会人に求められるのは、専門知識であり実務経験です。
例えば、日本で会計業務を数年やったあとで本科留学し、中国の会計についての専門知識を学んだ。
そうなれば、日中両国の会計業務に精通し、中国語も一通り話せるわけですから、日中間で業務を行う企業や、日本企業の中国法人など、必要とされる就職先が少なからず出てくるでしょう。
本科留学後の社会人の就職には、まず専門性が求められ、中国語はプラスアルファである、と考えてください。
中国語だけでは不利
一方、高校生や大学生が、特に漢語本科に留学し、卒業後に就職する場合ですが、勉強したのは中国語だけですし、社会人としての経験もありません。中国語を武器にして就職活動を戦うしかありません。
ですが、中国語だけではやっぱり不利なんです。その原因を作るのは、中国人学生です。
まず、日本国内で就職する場合。日本に留学した中国人学生がライバルとなります。彼らは日本語をマスターしていますし、大学で専門科目も勉強しています。その上、日中双方の事情に精通しています。語学プラスアルファのものを持っているわけです。
では、中国で就職する場合は? この場合も中国人学生が立ちはだかります。中国では毎年1万人以上の学生が、外国語学部日本語学科を卒業します。彼らは中国をよく理解している上に、給与も日本人よりはるかに安いです。簡単には彼らには勝てません。
もし彼らに勝てない場合、就職の場は日本となり、就職活動を戦うライバルは日本の大学で中国語を学んだ日本人学生となります。出た大学は違っても、日本人の中国語人材としては同等です。
何を語れるか?
しかし、同等であるということは、違いがないということでもあります。就職活動で彼らに負けないためには、違いを出せる何かが必要となってきます。
その何かとは、中国で何を考え、どんな経験をし、何を学んだかです。それは決して、インターンシップをして仕事の大変さを学んだとか、ボランティアを通して人の暖かさを知ったとか、そんな上っ面の薄っぺらい物語トークではありません。人間として何を身に付けたか、です。
中国語を話せる人はいくらでもいます。ですので、中国語を話せるだけでは就職で有利な人材にはなれません。
本科留学をした人に本当に求められるもの、就職活動で本当に武器になるものとは、「何語を話せるか」ではなく、「何を話せるか」です。それゆえ、留学中の過ごし方が重要になってきます。